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銚子醤油醸造業賃金の再推計:1864〜88年


鷲崎俊太郎


November, 2007


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Abstract
本稿は、銚子醤油醸造業の賃金(吉田ゆり子「醤油醸造業における雇用労働」林玲子編『醤油醸造業史の研究』吉川弘文館、1990年、所収)について、原データに遡って再集計を行い、幕末・明治期の賃金動向に対して若干の修正を行うことを目的とする。同書は、ヤマサ醤油を中心とする銚子醤油醸造業史の一次史料に即した実証的研究であり、吉田論文は、当該産業の雇用労働の実態と変遷を、近世から近代にかけて総合的に考察した点で高く評価されている。とくに、徳川〜明治期を連続的に捉えた奉公人賃金の1次データは、その後の賃金史研究に多大な貢献を果たしてきた。しかしながら、現場責任者である「頭」と青年男子を中心とする「若者」の給金に関して、データ上の問題が見られるため、本稿にてその再推計を試行してみた。その結果、「若者」については、バイアスの掛かったサンプルを取り除くことで、データの安定性が構築され、「頭」に関しては、役職手当を考慮したことで「若者」との賃金格差が明瞭に観察された。これらのファクト・ファインディングは、幕末期までに下落した実質賃金が、明治期に入ると従来の見解よりも早い回復力を持っており、明治10年代初期の地方消費市場について、熟練を中心とする階層の購買力が予想以上に高かったことを物語っている。
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