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生産要素市場の分断と物価水準:
中国における非貿易財・貿易財の相対価格に関する分析
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本稿では、従来のバラッサ・サミュエルソンモデルを拡張して、中国の物価水準の内外格差の決定要因について2部門2財2国モデルを構築して分析した。その結果、要素市場が分断されている場合、物価水準の内外格差が相対生産性だけではなく、貿易財に対する価格介入や、雇用構造の変化にも強い影響を受けることが明らかになった。また、この理論的結論が、中国の年次データを用いた実証分析によっても支持されることが分かった。なお、本稿の理論と実証分析の結果は、以下のことを示唆している。
1)計画経済期における重工業化政策が、高い資本装備率を温存させ、貿易財の国内価格を国際価格より大幅に高くさせたために、一人当たり実質GDP水準が国際的に見て低位にあるにもかかわらず、高水準の物価が維持されていたと考えられる。2) 改革開放以後、貿易財生産部門での労働集約的な産業の急成長に伴って、資本装備率が低下しつつ非貿易財部門の相対生産性が上昇してきたことを反映して、物価水準は過去の高水準から低水準へ転換したと理解できる。3)1990年代に入り、大量の農村労働力が労働集約的なサービス業へ参入し、サービスの供給が拡大したことが、国内物価水準を上昇させなかった重要な原因であると考えられる。
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本論文は、袁堂軍(2010)『中国の経済発展と資源配分: 1860-2004』東京大学出版会に収録されました。 |
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