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日本製造業におけるR&D活動と生産性:
企業レベルデータによる実証分析
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1990年代の日本経済は経済成長が長期に亘って低迷し、全要素生産性に代表される生産性の停滞が指摘されている。生産性の上昇に重要な影響を与える要因として、技術進歩が考えられ、技術進歩に貢献する重要なインプットとして研究開発投資が挙げられる。既に生産性と研究開発投資の関係に関しては多くの内外の実証分析例があるが、日本の企業ベースのデータによる実証分析例は、経済の拡張期における分析であり、またそのサンプルは大企業に限られており、また横断面データを用いていることから観察できない企業固有の特性を考慮した上でのR&D寄与を推計することができていないという問題点を指摘することができる。本稿では1990年代におけるの、中小企業を含めた3000社以上の企業データを使用することによって、近年の研究開発投資と生産性の関係について考察する。
本稿で得られた結果は、以下の3つである。第1に1990年代においても研究開発の生産性に与える影響は有意に正であるが、その収益率は日本企業に関する既存研究に比べると低下しているものと推察される。第2に研究開発の生産性に与える影響は産業別の差異よりも、むしろ企業別の差異の方が大きいものとなっている可能性が指摘されたことである。これは企業別の研究開発マネージメントの良し悪しが、その企業の生産性の良し悪しに結びつく可能性が高いことを示唆するものである。第3に、研究開発の生産性に与える影響は規模が大きいほど、あるいはハイテク産業であるほど大きいものとなっていることである。
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