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日本の産業間・産業内国際分業と対外直接投資:国内の物的・人的資本深化への影響


伊藤恵子・深尾京司


September, 2005


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Abstract
過去20年間の貿易データを概観すると、日本は特に東アジアとの間で、貿易と直接投資を通じて国際分業を深化させた。アジア諸国の多くは、非熟練労働が比較的豊富で、物的資本や熟練労働が不足していると考えられるから、これら諸国との国際分業の進展は、日本国内における物的資本や熟練労働に対する需要を拡大する効果を持っていたと推測される。本稿では、貿易構造の変化が国内生産要素市場に与えた影響を実証的に検討し、主に以下の4つの分析結果を得た。 第一に、貿易に体化された生産要素の量の変化を見たところ、日本は物的資本や熟練労働集約的な財をより多く輸出する、という特化パターンが進行した。 第二に、マクロ経済全体の資本労働比率と熟練労働比率の上昇過程において、その要因のほとんどが産業間効果(要素集約度が高い産業が拡大することによる効果)よりも産業内効果(各産業内の要素集約度が上昇することによる効果)に帰せられるということである。第三に、回帰分析の結果、国内の熟練労働シフトに対して特にアジアとの垂直的産業内貿易(VIIT)の進展が大きな正の影響を与えていることが示された。回帰分析の結果を用いて概算すると、対アジアVIIT総額の平均10%の増加は、製造業全体の熟練労働者シェア上昇分の2〜3割程度を説明できることになる。実際、1988−2002年の期間に、国内生産額に対する対アジアVIIT総額は製造業平均で年率約23%ずつ増加した。これは、熟練労働者シェアを年平均で約0.04%ポイント押し上げており、製造業全体の熟練労働者シェア上昇分の5〜6割程度が、対アジアVIITの増加によって説明できる。第四に、日本企業の海外生産活動の拡大も国内の熟練労働シフトに正の影響を与えているという結果であった。
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