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タイ、フィリピン、インドにおける消費の不平等: 家計調査マイクロデータを用いた学歴別・居住地域別年齢効果の検証
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本稿では、タイ、フィリピン、インドの家計調査マイクロデータを用い、1980 年代から2000 年にかけての消費の不平等に関して、コーホート・年齢ダミーモデルを用い、年齢効果を推定した。本稿では、一国内において、居住地域の違い、あるいは学歴が異なることによって、どのように年齢効果が異なるのかを検証した。このような点に着目した研究はなく、本研究がユニークであることを示す一つの特徴である。また、タイ、フィリピン、インド3 カ国にわたる家計調査マイクロデータを用いた実証研究そのものが少なく、データ利用の点で見てもユニークな論考となっている。本稿の分析結果によれば、年齢効果を学歴別や居住地域、国別で比較した場合において、その変化の程度や傾向に異なる動きが見られた。タイでは高学歴層、都市部での変化が低学歴層、農村部での変化よりも大きく、フィリピンでは全く逆の動きが見られた。インドは、タイやフィリピンと比較すると、どの階層においても通事的な変化はあまり見られなかったが、都市部や低学歴層の変化はタイの変化と同様の動きを見せた。これらのファインディングは、不平等の研究、並びに経済成長と不平等の関係について、新たな、そして重要なインプリケーションを有している。階層毎に年齢効果が異なるということは、一国の経済成長が不平等の変化に与える影響について、それぞれの国毎に異なる階層構造の影響を受ける可能性が高いことを示している。階層間構造の違いが経済成長にどのような影響を与えるのかを議論すること自体は、開発経済学の古典的な命題であるが、階層内不平等指標の通事的な変化である年齢効果の違いに着目し、タイ、フィリピン、インドの家計調査マイクロデータを用いて、階層内の違いを実証研究で示したことは意義深い。 |
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