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経済成長、不平等、貧困: タイ、フィリピンの県別パネルデータによる計量分析
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本稿では、タイの家計調査であるHousehold Socio Economic Survey とフィリピンの家計調査であるFamily Income and Expenditure Survey のマイクロデータ( タイは1988 年〜2002 年、フィリピンは1985 年〜2000 年)から県別のパネルデータを作成し、経済成長、不平等、貧困の三者関係について実証分析をおこなった。初期時点の不平等度がその後の経済成長や貧困緩和にどのような影響を及ぼすのか、ということを明らかにするために、本稿では、t 期からt + 1 期にかけての消費成長率、あるいは貧困緩和率を被説明変数とし、t 期の不平等指標を説明変数とするモデルを採用した。既存研究と異なる計量モデルを用いている点や、計量の手法としてSystem-GMMを用いている点、マイクロデータから県別のセミマクロデータを構築し分析を行っている点、タイとフィリピンの同時期のデータを用いて分析している点などが本稿のユニークな点である。実証結果からは、タイにおいても、フィリピンにおいても、初期時点の不平等は、その後の経済成長や貧困緩和に対して、ネガティブな効果を持っているが、その影響の度合いは両国で異なることが明らかになった。所得水準の低い地域にとっては、今後のキャッチアップを滞りなく成功させることは重要な政策課題だが、そのためには、現時点や過去の時点におけるその地域内の不平等が高いことは大きな問題なのである。 |
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