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日本の生産性と経済成長:産業レベル・企業レベルデータによる実証分析
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本論文では、内閣府経済社会総合研究所の『日本の潜在成長力の研究』ユニットで著者が他の研究者と共同で開発した『日本産業生産性データベース(Japan Industrial Productivity Database、JIPデータベース)』や『企業活動基本調査』個票データをもとに、日本のTFP上昇率の最近の低迷がどのような原因で生じているかを探った。分析により、以下の結果を得た。
近年のTFP上昇率の低迷は、非製造業まで含めた資本設備の稼働率下落によって、一部説明できるが、これを調整しても特に製造業においてTFP上昇率の低迷が著しい。一方非製造業では、規制緩和が進んだ産業を中心にTFP上昇率の加速が観察された。また製造業を営む企業の個票データを用いた分析により、退出効果がマイナス(生産性の高い企業が退出し、低い企業が存続する)であり、また参入効果はプラスだが小さいという現象が90年代に観察された。このような市場の「新陳代謝機能の低下」が日本の製造業の生産性低迷の原因の一つである可能性がある。
我々はまた、企業レベルのパネルデータを使って費用関数を推計することにより、存続企業のTFPの変動を、規模効果、稼働率変動効果、技術進歩、等に分解した。その結果、企業レベルで稼働率の変動や規模効果を調整した場合でも、技術進歩率の下落が多くの産業で観察された。
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