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本論文では、1990年代日本の生産性低迷の原因を探るため、製造業および非製造業について、各産業全体をほぼカバーする事業所・企業レベルのミクロデータを作成し、生産性上昇の要因分解を行った。製造業については、90年代の生産性上昇の減速は、ゾンビ企業仮説が主張するように産業の新陳代謝機能が90年代に急速に衰えたのでは無く(製造業の新陳代謝機能は80年代から一貫して低かった)、1)事業所新規開設減による「学習効果」の低下や、閉鎖間近の事業所がもたらす「死の影効果」の拡大などが内部効果(各事業所内での生産性変化)を低下させたこと、2)電機産業を中心に生産拠点のアジアへの移転により生産性の高い事業所が閉鎖されたこと、に起因する可能性が高いとの結果を得た。非製造業については、1997年以降と短い期間しか分析できなかったが、産業間で生産性動学が大きく異なることが分かった。大部分の非製造業では、負の大きな再配分効果が観測されるなど、新陳代謝機能は停滞していた。特に、建設業と運輸業では、生産性の高い大企業で雇用の削減が著しく、産業規模が大きいため、非製造業全体の生産性上昇下落に寄与した。また、電気、ガス・水道、放送などでも新陳代謝機能が低迷した。一方、通信業、小売業、卸売業では、正の内部効果が大きいだけでなく、小売、卸売業で生産性の低い企業の多くが雇用を縮小、通信業では生産性の高い企業の多くが雇用を拡大するなど、大きな正の再配分効果も観測された。
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